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CAD/CAM冠の普及状況

2014年4月1日に先進医療から保険導入された「CAD/CAM冠」は、2016年4月1日に条件付きながら大臼歯に適応が拡大されました。
その後半年を経過した現在、CAD/CAM冠はどの程度の歯科医院で受診できるようになっているのでしょうか。
今回は、CAD/CAM冠の施設基準届出受理件数から、普及状況を推しはかりたいと思います。

【表1】施設基準届出件数

(出典:各地方厚生局WEBサイトをもとにヤマキンにて集計 以下同様)

特筆すべきは、2016年3月までの3ヶ月間ならびに2016年9月までの3ヶ月間の増加件数は1,100件台である一方、2016年6月までの3ヶ月間は、3,028件と一時的に急増したことです。
この2016年6月までの3カ月間には、CAD/CAM冠と硬質レジンジャケット冠の大臼歯への一部保険適用がありましたので、将来の大臼歯への全面保険適用を見据えて届出件数が増加したとの推測が可能です。

都道府県別の届出割合

さて、先に見たとおり、全国平均で59.0%の届出割合ですが、都道府県別では大きな差が生じています。
まず、届出割合が高い都道府県を順に見ると、西日本に集中している傾向がわかります(表2)。

【表2】届出割合の高い都道府県(全国)

このうち、徳島県、愛媛県、香川県の四国3県が高い割合となっているのは、地域の大手歯科技工所の取扱い促進が反映されたものと考えられます。

一方で、東海北陸から東で60%以上であるのは、23都道県中、次の4道県に限られ(表3)、西日本が24府県中18府県であるのとは対照的です。

【表3】届出割合の高い都道府県(東日本)

逆に、届出の割合が低い都道府県を見ると、表4のとおりです。

【表4】届出割合の低い都道府県(全国)

ここで特徴的なことは、歯科用CAD/CAMシステムや材料のメーカーやディーラーが本社・支社を構える、いわば「お膝元」である東京都が47.9%と、届出割合が低いことです。

これについては、東京都は他県と比べ、自由診療の割合が多いのではないかという仮説をたてました。
仮説を検証するにあたって、政府統計をはじめとする資料で適切なものは見つかりませんでした。そのため、製品カテゴリは異なりますが、ヤマキンの歯科用貴金属合金の出荷量をもとに検証してみました。
歯科用貴金属合金の全体出荷量は安定しており、かつ、ヤマキンが占めるシェア率が高いので、保険診療と自由診療の市場の傾向を信頼性の高い自社データで示すことができます。保険適用の材料として最も一般的な金銀パラジウム合金(以下、金パラ)と、自由診療の代表的な材料である歯科メタルセラミック修復用貴金属合金(以下、陶材焼付用貴金属合金)の都道府県別出荷実績を比較することで傾向を確認しました(表5)。
ちなみに、「歯科機器・用品年鑑2016年版」(株式会社アールアンドディ刊)によれば、ヤマキンの出荷量ベースの国内シェア率は、金パラは3位(16.0%)、陶材焼付用貴金属合金は1位(34.8%)です。

【表5】ヤマキンの国内出荷量に占める都道府県別の金パラと陶材焼付用貴金属合金の出荷量の差異

(差異上位 2015年7月~2016年6月実績)

都道府県別に見て、陶材焼付用貴金属合金が金パラの出荷量を大幅に上回っているのであれば、自由診療に積極的な都道府県であると言うことができると考えられます。
表5のように、東京都に次いで高知県、神奈川県、栃木県が、金パラと陶材焼付用貴金属合金の差異が大きく、比較的自由診療が多いと考えられますが、とりわけ東京都のみが2ケタの差であることから、東京都は自由診療の割合が大変高いということがわかります。
したがって、東京都は比較的自由診療を推奨する歯科医院が他の道府県より多く、その傾向がCAD/CAM冠の施設基準届出件数にも反映していると関連付けることができます。

全国の都道府県別の届出割合は以下のPDFをご参照ください。

●◎都道府県別CAD/CAM冠施設基準届出受理状況
~各地方厚生局WEBサイトからヤマキンが独自に集計~

【PDFファイル 34KB】