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この記事は歯科医療関係者のみご覧ください。〈一般のみなさまへの情報提供を目的としたものではありません〉

CAD/CAM冠の大臼歯適応への展望

2014年4月1日に先進医療から保険導入された「CAD/CAM冠」ですが、このたび厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で「硬質レジンジャケット冠、CAD/CAM冠」として算定要件が新設され、条件付きながらCAD/CAM冠が大臼歯に適応が拡大されました。
2016年2月10日には、診療報酬の改定が中医協総会で決定し、塩崎恭久厚生労働大臣に答申されました。また、2016年3月4日には地方厚生支局や都道府県に対する診療報酬説明会も実施され、2016年4月1日の保険適用に着々と進んでいます。

硬質レジンジャケット冠、CAD/CAM冠

適応を小臼歯だけでなく、大臼歯へ拡大するが、大臼歯については、歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有する患者に限り算定できる。ただし、医科の保険医療機関又は医科歯科併設の医療機関の医師との連携の上で、診療情報提供(診療情報提供料の様式に準じるもの)に基づく場合に限る。

CAD/CAM冠の装着

CAD/CAM冠を装着する際に、歯質に対する接着性を向上させることを目的に内面処理を行った場合は、所定点数の100分の100に相当する点数を所定点数に加算する。

(典拠:中医協総会(2016年2月10日) 資料「個別改訂項目について」)

なお、2016年3月4日の診療報酬説明会では、「医師の診断にあった場合に限定して適用を大臼歯に拡大する」ことと、装着については「従来通りだが文言を明確化させた」旨、説明がありました。(典拠:診療報酬説明会 USTREAMによるライブストリーミング)

現行の「CAD/CAM冠」の保険導入の経緯

2009年5月1日に先進医療に適用された「歯科用CAD・CAMシステムを用いたハイブリッドレジンシステムによる歯冠補綴」は、およそ5年間にわたり、最終的に計4大学で臨床実績を重ねました。
先進医療適用時の資料によると、この治療方法は次のとおりの効果があると報告されています。

  • 高い機械的強度と適切な表面性状が保たれ、患者が長期間使用できる。
  • 金属アレルギーの患者にも適用できる。
  • 従来の製作方法と比べて、作業効率が高まる。
  • 完成品毎の品質のばらつきを抑えることができる。

(典拠:中医協総会2009年4月22日資料 先進医療専門家会議における第2項先進医療の科学的評価結果 別紙2)

これらの効果が確認され、2014年1月以降、数回にわたる中医協総会を経て、2014年4月1日に「CAD/CAM冠」として小臼歯を対象に保険導入されるに至りました。

適用の条件について

今回、2016年4月1日に向けて大臼歯への保険適用への道筋が明確につけられましたが、前述のとおり算定条件は「歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有する患者」に限定する内容となっています。
連携の内容や具体的な方法については、より詳細な情報の発出を待たなければなりませんが、アレルギーの原因が歯科用金属の成分であるという診断を医科の診療所等で行い、診療情報提供の様式(恐らく「別紙様式11」)に準じ、患者情報を歯科の診療所等と連携することが必要です。
一般社団法人日本歯科商工協会による「歯科分野に係る診療報酬改定等に関する説明会」が2016年3月25日に開催され、厚労省医政局経済課の担当官から各メーカー等に説明がありますので、詳しい内容がわかりましたら、改めてお知らせいたします。

今回の適応拡大による市場への影響について

歯科用金属を原因とする金属アレルギーは、私たち歯科医療従事者の経験則から見て、金属アレルギーによる皮膚炎などの外観的な疾患を持たない健常者を含めた全人口に占める罹患率はさほど多くないと考えられますので、大臼歯のCAD/CAM冠やジャケット冠の対象となる症例数は少ないものと予想されます。
また、金属アレルギーの患者であっても、パッチテストによりアレルギーの原因となる元素を特定し、その元素を含まない歯科用貴金属合金があれば、強度や耐久性に実績のある歯科用貴金属合金を選択するケースがあると思われます。大臼歯部で使用する材料は、咬合圧の関係から信頼性の高い材料選択が重要です。
これらの理由から、小臼歯に対して大臼歯での使用数はわずかであり、ハイブリッドレジンブロック市場への影響は表面に現れないものと推測しております。

大臼歯で使用するハイブリッドレジンブロックについて

2015年10月20日に開催された「平成27年度第1回診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会」では、日本補綴学会と日本歯科審美学会から「適応症として、維持力に充分な歯冠高径があること。過度な咬合圧が加わらないことが求められているが、機械的性質が向上したハイブリッドレジンの開発とCAD/CAMの技術的進歩により、第2大臼歯が残存する症例では第1大臼歯への適応が充分可能と考えられる。」と提案されました。

(典拠:平成27年度第1回診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会 医療技術評価・再評価提案書 P.2,652~P.2,655)

この提案は第2大臼歯の残存が条件であることから、現状の製品を使用するためには、強度的な保証が整わなければならないという考え方であったと推測されます。
2016年4月1日の改定では、金属アレルギー患者に対して残存歯の有無に関わらず大臼歯に適用範囲が拡大されますが、この場合、ハイブリッドレジンブロックは現在保険適用となっている各社の製品が使用できることになります。
そのため、上市されている製品の中であっても、口腔内でのトラブルを極力回避できるよう、強度や耐久性が高く、信頼ある製品を選択することが重要と考えられます。

大臼歯で必要とされる強度について

臼歯部とりわけ大臼歯部では、最大咬合圧は一般に握力の3倍とも言われており、非常に大きな力がかかります。この最大咬合力は、いわゆる静的荷重ですので、運動時などに強くかみしめる荷重を指します。
一方で、日常の咀嚼は、最大咬合圧に比べ小さい荷重で行われますが、口腔内での湿潤した環境下において、繰り返し負荷がかかることによって、疲労破壊に至ることが考えられます。このときの荷重は最大咬合圧よりはるかに小さな値を示します。
私たち歯科医療従事者は、口腔内で咬合圧の影響を大きく受ける大臼歯の材料選択において、大変注意深くあたらなければなりません。
大臼歯で求められる材料特性をテーマに、学術レポートとしてまとめましたのでお知らせいたします。
この中で、使用する材料は30日水中浸漬後においても1,280Nの咬合圧に耐える強度であることなど、各文献をもとに考察しております。ヤマキンWEBサイトからぜひご一読ください。

●CAD/CAM冠の大臼歯適応について~求められる材料特性についての考察~
https://www.yamakin-gold.co.jp/technical_support/webrequest/report.html