Q&A

この記事は歯科医療関係者のみご覧ください。〈一般のみなさまへの情報提供を目的としたものではありません〉

【歯科技工Q&A】メタルフレームの製作(前歯メタルセラミック修復物用)

前歯メタルセラミック修復物用メタルフレームの製作手順を知りたい。

A

3本ブリッジの症例を例にご説明します。

1.ワックスアップ前処理

支台歯と隣接歯にワックス分離材を塗布し、ポンティックにはパラフィンワックス(厚み約1mm)を1枚焼き付けました。

ワックスアップ前処理

 

2.ワックスアップ

ワックスで歯牙形態を回復します。
ポンティックのパラフィンワックスは、外形に合わせて余分な箇所を除去し、ワックスアップを完成させます。

ワックスアップの完成(唇側面)

ワックスアップの完成(舌側面)

3.コア採得

ワックスアップを行った部位と隣接歯まで、歯科技工用シリコン印象材でコアを採得します。
このシリコンコアは、カットバック時にワックスのカット幅(厚み)を確認するために使用します。

コア採得

 

4.カットバック

4.-1切縁部分のカットバック

シリコンコアを外し、唇側面、舌側面共に切縁より1.5~2mm[1]下げた位置に外形に沿ってラインを引きます。
ラインの位置は、歯冠の大きさや支台歯の形成量などによって決定します。

ラインを引いた状態(唇側面)

ラインを引いた状態(舌側面)

唇側面と舌側面のラインを繋げるように、切縁部分のワックスをデザインナイフでカットします。

切縁部分のワックスをカットした状態(舌側面)

 

4.-2唇(頬)側面のカットバック

切縁カット面の唇側縁に沿って1.2~1.5mm[1]舌側寄りにラインを引きます。

切縁にラインを引いた状態(切縁カット面)

 

引いたラインを目安に、デザインナイフなどで唇側面をカットします。
切縁側から歯頸側にかけて均一に陶材築盛幅が1.2~1.5mm[1]確保されていることを確認します。
採得しておいたシリコンコアを近遠心中央部縦方向にカットし、唇側面にあてて確認できます。

唇側面のワックスカット終了

 

ワックスカット幅の確認

 

唇側面カット後、1歯毎に、それぞれ近遠心面から中央寄り1.0~1.5mm[1]の位置に、外形に沿ってラインを引きます。

近遠心にラインを引いた状態(唇側面)

 

隣接面形態を付与するため、ラインに沿って“グルーブ”を掘り込みます。エバンス彫刻刀やレグロン刀の後ろにある”耳かき部”などを幅約1mmに技工用ハンドピースを用いて切削形成すると、グルーブ掘り込みの専用彫刻刀として使用できます。

連結部はグルーブを深く掘り込むと、陶材焼成後の形態修正時にダイアモンドディスクでの切り込みを入れやすくなりますが、掘り込み過ぎると連結部の面積が小さくなり、破折の原因となります。
連結部となるコンタクトポイントを残すように掘り込むことが重要です。

例:左上中切歯遠心 連結部の形態

 

特に切縁近遠心隅角部は、ダイアモンドディスクの深い切り込みが要求される箇所のため、切縁から約1mm下げてグルーブを掘り込みます。(写真丸印部分)

グルーブを付与した状態(唇側面)

グルーブを付与した状態(舌側面)

唇側面隅角は、陶材焼成時に応力が集中しないよう丸みを形成し、切縁の舌側と隣接面は0.5~1mmの巻き込み(陶材とメタルの移行部)を付与します。

左上中切歯近心面

 

近心面の巻き込みを遠心面にも付与すると、単冠のフレームデザインとなります。

近心面全体像(左から中切歯・側切歯・犬歯)

 

遠心面は、下図のように処理します。

左上犬歯遠心面

 

4.-3ポンティック粘膜面のカットバック

始めに連結部の片方にワックスを流し込みポンティックと連結します。
その後、支台歯から外してポンティックの粘膜面をカットします。パラフィンワックス(厚み約1mm)を除去すると、適度なカット量となります。
次に、粘膜面舌側に0.5~1.0mmの巻き込みを付与します。

ポンティック粘膜面

 

歯冠長が長く連結部面積が十分確保できる症例では、歯間ブラシが入るように歯頸部鼓形空隙を付与します。
一方、歯冠長が短く、粘膜面近くまで連結部の面積を確保しなければ連結強度が得られない症例では、無理に粘膜面のカットバックは行わず、メタルで粘膜面をタッチさせ、連結部の面積を歯頸部鼓形空隙まで埋めて広くとります。

 

4.-4ワックスパターンのマージン合わせ

2本の支台歯とも(ポンティックが連結された支台歯は、連結部が折れないように)歯頸部付近のワックスを焼付け圧接し、余剰ワックスを削ってマージンに“ぴったり”と合わせます。
その後、二次石膏台から支台歯の浮きがないことを確認し、もう片方の連結部にもワックスを流し込み、3本ブリッジを連結すればカットバックの完成です。

カットバックの完成(唇側面)

カットバックの完成(舌側面)

舌側に陶材を築盛する厚みが確保できる場合は、舌側のワックスを歯頸部付近までカットバックすると、フルベークタイプのデザインにすることができます。

フルベークタイプのデザイン

 

5.スプルーイング

舌側歯頸部寄りにリムーバブルノブを付与し、ランナーバーを用いてスプルーイングを行います。

スプルーイング (唇側面)

スプルーイング(舌側面)

6.メタル調整・メタルフレームの完成

鋳造後、埋没材から掘り出し、適合を確認してからスプルーカットを行います。
メタル調整を行い鋭角な箇所を丸く調整後、最後はセラミックポイントで仕上げ完成させます。

メタル調整完成(唇側面/切縁)

 

※参考文献
[1]山本眞.ザ・メタルセラミックス.クインテッセンス出版,1982,520p.

 

この記事は過去に発行したQ&Aを再編集したものです。