学術・安全性

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フッ素の普及と歯科材料への応用

近年、歯科診療においてフッ素(フッ化物)の利用が一段と進んでいます。

従来から、フッ化物の歯面塗布やフッ化物を成分とした洗口剤や歯磨剤の使用は、再石灰化を促進させることによるう蝕予防に効果があるとされていましたが、2000年に「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が策定され、具体的な運動項目に加えられたことにより、より普及が進んだと考えられます。
この「健康日本21」は、疾病構造の変化に対応し、全ての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするために、2000 年に生活習慣病やその原因となる生活習慣の改善等に関する課題について目標等を選定し、国民が主体的に取り組める新たな国民健康づくり運動として策定されたものです。歯科の目標項目は「幼児期のう蝕予防」「学齢期のう蝕予防」「成人期の歯周病予防」「歯の喪失予防」など13点あり、2011年10月に目標達成度が最終的に検証されています。

う蝕予防とフッ素使用の運動成果について

このうち、「幼児期のう蝕予防」「学齢期のう蝕予防」について「健康日本21」最終評価(2011年10月 健康日本21評価作業チーム)では、「う歯のない幼児の割合(3歳)」は目標値に達し、「一人平均う歯数(12歳)」は目標に向け改善したと評価されています。
また、「フッ化物歯面塗布を受けたことのある幼児の割合(3歳)」の目標達成と「(学齢期における)フッ化物配合歯磨剤を使用している割合」の改善についても評価されています。
それぞれの目標項目と達成状況は、次ページの表1~4のとおりであり、「健康日本21」の目標策定時のベースライン値と比較し、いずれの項目も大きく改善されていることがわかります。

◎表1:「健康日本21」目標項目:う歯のない幼児の増加

◎表2:「健康日本21」目標項目:フッ化物歯面塗布を受けたことのある幼児の増加

◎表3:「健康日本21」目標項目:一人平均う歯数の減少

◎表4:「健康日本21」目標項目:学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤の使用の増加

出典(表1~4): 国民健康推進のための国民運動「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」「健康日本21」最終評価(2011年10月 健康日本21評価作業チーム)

表4のフッ化物配合歯磨剤の使用について、平成21(2011)年国民健康・栄養調査を直近実績値とした比較上3.7ポイント及ばなかったものの、最終評価資料では次のとおりコメントされており、フッ素配合歯磨剤の使用率はより高いものと推察されています。

◎使用している歯磨剤がフッ化物配合であるか否かについての認識があまりないとも考えられるので、市販の歯磨剤の90%にフッ化物が配合されている現状からみると、使用者はより高率になっていると考えられる。

◎8020推進財団による小中学生2万人を対象とした調査によると、フッ化物配合歯磨剤を使用している児童・生徒の割合は、平成17(2005)年で88%、平成22(2010)年で89%であった。また、フッ化物配合歯磨剤が全歯磨剤に占める割合に関する統計(生産ベース)でも約9割と報告されている。

フッ化物配合歯磨剤の普及について

「学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤の使用の増加」についてのコメントにあるとおり、市販の歯磨剤にフッ化物が配合されている製品は90%と見られます。
さらに「歯科機器・用品年鑑2015年版」(株式会社アールアンドディ刊)や各社WEBサイトをもとに医院向けオーラルケア関連製品(歯磨剤)についてまとめると、表5のとおりです。

ここから、う蝕予防を効果・効能としている歯磨剤にはフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズのうち、いずれかのフッ化物が成分に含まれており、あらためてう蝕予防にはフッ化物使用が重要と考えられていることがわかります。
なお、ウェルテック株式会社の歯磨剤は、それぞれの効果に応じた歯磨剤(フッ化物なし。IP以外)とう蝕予防を効果としたジェルコートFの組み合わせを推奨しています。

表5:医院向け歯磨剤(売上高シェア率上位4社)

出典: 「歯科機器・用品年鑑2015年版」(株式会社アールアンドディ刊)、各社WEBサイト

歯科修復物のフッ素徐放性について

このように、フッ化物の使用は、う蝕予防に効果的であることから、オーラルケア関連製品では多数を占めており、また、歯科材料においてもいくつかの製品でフッ素徐放性の機能が取り入れられつつあります。
しかしながら、歯科材料への応用においてはフッ化物イオンの放出に従って材料が劣化すると言われているため、特に補綴物に使用する材料においては強度や耐久性との両立が課題となっています。
ヤマキンの「KZR-CAD HR ブロック2」は、このような問題を解決し、高い強度や耐久性とともにフッ素徐放性を有するハイブリッドレジンブロックです。

◎図1:KZR-CAD HR ブロック2

この「KZR-CAD HR ブロック2」は、図2の模式図のとおり、フッ素徐放性フィラーを配合しているだけでなく、ヤマキンのハイブリッド型硬質レジン「ツイニー」で強度や耐久性に実績のあるセラミック・クラスター・フィラーに均質化技術を加えてさらに進化させることで、研磨性を向上させることにも成功しています。

◎図2:「KZR-CAD HR ブロック2」のフィラー模式図

「KZR-CAD HR ブロック2」は、フッ素徐放性フィラーの表面処理条件を最適化したことによりフッ化物イオンを長期間にわたって安定的に放出します(図3)。
なお、長期間の口腔内での使用を想定すると、いずれフッ化物イオンが枯渇することが考えられますが、「KZR-CAD HR ブロック2」では、フッ化物を含む歯磨剤や洗口液を使用することでリチャージされることも確認されています。

◎図3:「KZR-CAD HR ブロック2」のフッ素徐放性

このようにフッ素徐放性をもつ「KZR-CAD HR ブロック2」ですが、サーマルサイクル試験後(5,000回、4℃-60℃)においても250MPa以上の高い曲げ強さを維持し、優れた耐久性を有します(図4)。
この5,000回のサーマルサイクルは、口腔内で1日10回の温度変化があると想定した場合、約1.5年に相当する回数です。

◎図4:「KZR-CAD HR ブロック2」の曲げ強さ
(歯冠用硬質レジン「ルナウィング」との比較)

管理医療機器 KZR-CAD HRブロック2 歯科切削加工用レジン材料 認証番号:226AABZX00171000
管理医療機器 ルナウィング 歯冠用硬質レジン 認証番号:218AABZX00035000
管理医療機器 ツイニー 歯冠用硬質レジン 認証番号:222AABZX00121000
製造販売元:YAMAKIN 株式会社 〒781-5451高知県香南市香我美町上分字大谷 1090-3