
陶材黄変の原因を解明~日本セラミックス協会論文掲載~
日本セラミックス協会 学術誌のトップページに掲載されました。
陶材黄変について、ヤマキンの研究員が論文執筆
ヤマキンの無機材料開発課 主任研究員 田中秀和らの研究成果が日本セラミックス協会の学術誌に取り上げられ、表紙とトップページに選ばれました。
歯科に関する研究が、あらゆるセラミックスに関する学術・産業団体の論文誌で取り上げられたということは、無機・有機・鉱物・化学・物理・電子・土木・医療・工芸など広範な分野の方々に、歯科業界の研究レベルが非常に高いものと知っていただけたと感じております。
日本セラミックス協会とは
日本セラミックス協会は、セラミックスの産業及び科学・技術の発展を目的として1891年(明治24年)に創立された、セラミックスに関するわが国唯一の総合的な学術・産業共同の団体です。(協会WEBサイトより)
協会の学術論文誌Journal of the Ceramic Society of Japan(略称JCS-Japan)は、1892年に大日本窯業協會雑誌としてスタートし、現在まで120年以上の長きにわたり、セラミックスの科学と技術に特化した内容を掲載し続ける日本唯一の論文誌です。
●公益社団法人 日本セラミックス協会 http://www.ceramic.or.jp/
●JCS-Japan http://jcs.ceramic.or.jp/
陶材黄変の原因を解明、生体に安全な CeO2による黄変抑制を研究
本論文では、銀高含有合金製の支台歯フレームにリューサイト(Leucite;KAlSi2O6)質陶材を築盛した歯科補綴物における、焼成時の黄変現象と酸化セリウム(CeO2)の添加による、その抑制について報告しています。
この黄変現象は歯の審美性を著しく低下させますが、歯科用陶材についての黄変に関する学術的報告は少なく、従来その抑制効果が知られていた三酸化アンチモン(Sb2O3)の添加や、陶材粉末の硝酸塩化合物による処理が報告されているものの、その原因については解明されていませんでした。
アンチモンおよびその化合物は人体に対して毒性の疑いがある素材であるため、過酷な口腔内環境において長期間維持される歯科補綴物は、その構成成分の溶出リスクを鑑みると代替素材の使用が望ましいと考えられます。
黄変現象の原因はセラミックス中に拡散した Ag+ イオンの還元による Ag コロイド粒子の凝集とされていますが、田中らは、生体安全性に優れる CeO2の添加がこれを抑制し、またその機構が高温環境下での CeO2 と Ce2O3 との間の酸化還元機構によるものであることを明らかにしました。
執筆者のご紹介
執筆者の田中秀和は、ヤマキンでセラミックスの開発に従事しながら、高知工科大学博士後期課程 社会人特別コース 酸化物材料工学研究室にて研究を続けて参りました。
いよいよこの3月に博士課程が修了する予定となっており、「ヤマキン博士会」の一員として、イノベーション発生の原動力となることが期待されています。
●今回の論文掲載については、高知工科大学のWEBサイトでも紹介されています。
http://www.kochi-tech.ac.jp/kut/newsfiles/b01m00002871.html