学術・安全性

この記事は歯科医療関係者のみご覧ください。〈一般のみなさまへの情報提供を目的としたものではありません〉

韓国デンタルテクノロジー・エキスポ&サイエンティフィック・カンフェレンス参加

2016 年 7 月に学術部の歯科技工士スタッフとともに韓国 釜山で開催されたデンタルショーに参加しましたので、韓国の歯科事情をお伝えしたいと思います。
内容には、出会った代理店やユーザーのみなさんの私見も含まれているため、各国市場全体の統計的な情報とは異なる点もあるかと思いますが、ここでは貴重な「ナマの声」として、そのままお伝えしたいと思います。

韓国代理店の「ツイニー専用コーナー」でのデモンストレーション

2016年7月16日(土)~7月17日(日)に「韓国デンタルテクノロジー・エキスポ&サイエンティフィック・カンフェレンス」(以下、KDTEX)が開催されました。
釜山といえば、対馬海峡をはさんで九州とも近く、古くから交通の要所として経済や文化の面で大切な位置にある韓国第二の都市です。
人口約 360 万人の港湾都市であることから、日本各地から航空便やフェリー・高速船が頻繁に往来しており、日本人もビジネスや観光で数多く訪れています。

開催場所となった「釜山エキシビションセンター(BEXCO)」は 2001 年に開業した比較的新しい展示会場です。 年に一度開催されているこのデンタルショーは、ヤマキンの韓国代理店が力を入れて出展しているデンタルショーのひとつです。
出展企業は約 100 社。来場者数の約 1 万人は、日本の中部日本デンタルショーとほぼ同じ来場者数ですが、人口約 5100 万人の韓国では、規模の大きなデンタルショーと言えるでしょう。

ヤマキンの韓国代理店が出展するブース内には、「ツイニー」専用のコーナーとともに、デモンストレーション特設会場が設置されており、展示会期間中、ヤマキンのハイブリッド型硬質レジン「ツイニー」のライブデモンストレーションを実施しました。

当代理店は、ヤマキンの陶材「ゼオセライト」を主力製品に据えつつ、近年は韓国にとって新しい素材であるハイブリッド型硬質レジン「ツイニー」の販売を始め、現在拡販に力を入れています。そのため、ヤマキンも高知工場や大阪本社で実技研修会を頻繁に開催し、当代理店のユーザーを数多く迎え入れています。

◎ツイニー専用コーナーでは…

ブース内の「ツイニー」専用コーナーでは、日本国内のデンタルショーでもたびたび実施している、CAD/CAMで切削したジルコニアフレームに「ツイニー」の若年代と老年代の前装冠を築盛するデモンストレーションを実施しました。

ちなみに、韓国ではレジン系の材料はコンポジットレジンが主流で、築盛用のレジンの認知度は「2~3割程度」(代理店社長)にとどまります。
そのため、ブースへの来場者の中には、ハイブリッド型硬質レジンを初めて見る方がほとんどなので、素材の基礎や作業方法について数多くのご質問をいただきました。

「これは、どんな素材なのか。レジンなのか。陶材と比べたメリットは何か。」
「レジンは、生体安全性には問題はないのか。」
「どうやって重合するのか。」
「陶材は金属用とジルコニア用に分かれているが、『ツイニー』は金属とジルコニアのどちらにも使用できるのか ※1 。」
また、加熱重合器を持っていないユーザーからは、沸騰した熱湯で重合可能かなどの質問を受けました。
床用レジンからの発想だと思われますが、新しい素材を取り入れるために、臆することなく積極的に質問する姿勢はさすが韓国のユーザーです。

※1 マルチプライマーリキッドがあれば、貴金属、非貴金属、ジルコニアにも使えます。

◎ライブデモンストレーション

代理店の特設会場で、ライブデモンストレーションを行いました。
こちらでは、ジルコニアフレームに「ツイニー」(ガム色)を築盛するというもので、各回とも、始まる前に席がほぼ埋まるほどの人気でした。

ライブで築盛したガム色の模型は、順番に会場内のお客さまで回され、それを写真撮影される方もいらっしゃいました。デモの様子をスマートフォンで動画撮影をしている姿もありました。
ハイブリッドレジンをご存じのユーザーからは、「ツイニー」のガム色にペーストタイプとフロータイプがあり、他社にはないほど豊富なラインアップであることに驚かれていました。

釜山空港から地下鉄などで 1 時間程度の会場ですので、みなさまも「一番近い海外デンタルショー」にご参加されてみてはいかがでしょうか?

韓国歯科市場のこぼれ話

現地で聞いた耳よりの情報や、日本との違いについて、興味深いテーマをお伝えします。

◎韓国の公的保険制度について

韓国も日本と同様、国民皆保険制度です。
日本では患者が3割負担しますが、韓国は2割負担で、8割が保険でまかなわれます。
しかしながら、歯科治療は歯科医師の診断と治療にあたる部分が保険適用で、それ以外の多くは自費診療となります。
そのため、補綴物に関しては、アマルガムのみが保険適用となりますが、陶材、ジルコニア、ハイブリッドレジン、貴金属合金などは、材料に関わらず保険適用外です。
なお、最近、65歳以上の高齢者については、インプラントが2本までであれば5割負担で治療できるようになりました。

◎韓国の CAD/CAM システム普及の現状について

日本の歯科技工技術は非常にレベルが高く、その経験とテクニックは世界 No.1 です。しかし、その技術力が CAD/CAM システムの普及を遅らせているともいわれています。韓国はもともと IT が盛んで、デジタル技術が普及しやすい環境下にありました。そのため、日本よりも早い時期から歯科用 CAD/CAM システムの導入が進んでいました。
初期は大型機が中心の、いわゆるセンター方式で市場が形成されてきましたが、徐々に小型機の普及も増え、2013 年頃にはシステムを導入している歯科技工所が全国の歯科技工所の 2000 軒中 500 軒に達しました。
多くの歯科技工所で CAD/CAM を扱えるようになると、カスタムアバットメント等の特殊加工も行うセンターは少しずつ減少し、現在では 5~6 軒残っている程度になりました。2014年には 900 軒に達し、現在はさらに増え、CAD/CAM システムは一般的な「なくてはならない技術」の段階に進んでいます。
日本では、2014 年 4 月に CAD/CAM 冠が保険導入され、さらに、比較的手に入れやすい切削機やスキャナーの普及機が続々と発売されてきました。その結果、個人経営規模の歯科技工所でも CAD/CAM 加工の仕事をできるようになっています。
近い将来、CAD/CAM 冠の適応範囲拡大が予想されますし、均質なものを安定的に供給できるメリットもあるので、今後日本でも一般的な技術になる日がやってくると推測します。

◎ジルコニアディスクについて

韓国市場でのジルコニアディスクは、高価で高品質な(日本を含めた)海外製品と、韓国国産の安価な製品との 2 極化が見られます。安価が特徴の製品では価格競争が激化しており、中には切削過程のクラックに注意を要する製品もあると聞きました。
最近では、物性や色調などに特徴がある製品が注目されるようになり、カラータイプやグラデーションタイプといった、品質や審美性の高い、次世代型製品の発売に期待が高まっているとのことです。ジルコニアディスクの市場については、日本市場の方向性と類似したところがあるかもしれません。

管理医療機器 ツイニー 歯冠用硬質レジン 認証番号:222AABZX00121000
管理医療機器 マルチプライマー 歯科金属用接着材料(歯科セラミックス用接着材料、歯科レジン用接着材料) 認証番号:226AABZX00069000
管理医療機器 ゼオセライト 歯科メタルセラミック修復用陶材 認証番号:221AABZX00172000
製造販売元:YAMAKIN 株式会社 〒781-5451高知県香南市香我美町上分字大谷 1090-3