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歯の健康が守られてきた背景とは?【後編:歯科疾患実態調査】

前回は、厚生労働省による「平成28年歯科疾患実態調査」※1の結果から、
① 8020達成者は、5年前の調査の40.2%から51.2%に増加。
② 1980年代は、オーラルケアの大転換期。
③ 長年にわたるオーラルケア啓蒙によって、若い世代も う蝕が減少。
とお伝えしました。

今回は、後編として、フッ化物を用いた う蝕予防について「平成28年歯科疾患実態調査」※1からご紹介します。

歯の健康が守られてきた背景とは?(後編)

う蝕予防のもうひとつの重要な要素は、「フッ化物の応用」です。

【今回のまとめ】
① 2000年代になり、6割の子供たちがフッ化物塗布を経験。
② 塗布に加え、洗口と歯磨剤によるフッ化物応用が普及。
③「フッ化物の応用」によって、虫歯ゼロや二次う蝕の減少が期待されます。

こちらは、前回も掲載したグラフです。
10歳代から40歳代まで、「若い世代でう蝕が大幅に減っている」ことがわかります。

◎年齢階級別 平均う蝕(DMF)歯数 ※1
(DMF:未処置う歯・う蝕原因の喪失歯・う蝕原因の処置歯)

「フッ化物塗布」を経験している子供たちは、6割以上です。

う蝕予防についてはWHO(世界保健機関)がフッ化物応用を推奨しており、わが国でもその有効性について、日本歯科医師会や各歯科学会において1970年代から見解が公表されています。

フッ化物塗布の実績を見ると、乳幼児・小児(1~14歳)の経験者の割合は継続的に増加し、2000年代には5割を超え、いまでは6割以上の子どもたちがフッ化物塗布を経験しています。

◎フッ化物塗布経験者の割合 総数(1~14歳) ※1

フッ化物塗布経験者については、「平成23(2011)年歯科疾患実態調査」※2まで、フッ化物塗布を受けた場所が報告されていました。
下のグラフのとおり、近年「その他医療機関」での経験者の割合が増えていることから、積極的に歯科診療所に通院し、フッ化物塗布を受けている人が増えていることが読み取れます。

◎フッ化物塗布経験を受けた場所 総数(1~14歳) ※2

自宅での「フッ化物応用」も広まっています。

平成28(2016)年の歯科疾患実態調査からは、フッ化物塗布を受けた場所ではなく、フッ化物応用(フッ化物塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤の使用)経験の有無に変更されました。
フッ化物応用のいずれかの経験があると答えた割合は81%に達しており、フッ化物応用が広く普及していることがわかります。

◎フッ化物応用の経験の有無(2016年 1~14歳)】 ※1

フッ化物応用の経験を種類別に見ると、フッ化物塗布、フッ化物配合歯磨剤の使用が、ともに60%を超えています。フッ化物配合の歯磨剤の使用の割合が高いことから、医療機関だけでなく、自宅のケアでもフッ化物を用いることが広まってきていることが読み取れます。

◎種類別 フッ化物応用の経験割合(1~14歳) ※1

歯磨きの習慣化に加え、フッ化物応用による、さまざまなオーラルケアを行うようになったことで、近年のう蝕歯減少につながったと考えられます。

フッ化物の有用性は、これからも期待されます。

政府「健康日本21(第2次)」※3の参考資料では、「フッ化物応用法や小窩裂溝填塞法(シーラント)等のエビデンスが確立しているう蝕予防法について、地域の現状に応じて実施することが求められる」と述べられています。

歯科診療所でのフッ化物塗布や、歯磨き剤や洗口剤でのフッ化物含有のほか、今後は口の中に固定されたものからフッ化物が徐々に放出される医療機器など、「虫歯ゼロ」「二次う蝕防止」への期待が高まります。

【参考文献】

統計表:
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17c.html

結果(概要)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf

「統計表(その1)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf

「参考資料」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf