Q&A

この記事は歯科医療関係者のみご覧ください。〈一般のみなさまへの情報提供を目的としたものではありません〉

【歯科技工Q&A】前ろう付けのポイント

前ろう付けの手順と、強度・精度を向上させるための注意点を紹介します。

メタルセラミック修復物ブリッジは、前ろう付けで連結するより、ワンピースで製作した方が強度・耐食性に優れます。

しかし鋳造収縮などにより、ワンピースの適合に不良が生じる場合があります。
最近ではレーザー溶接も実用化されていますが、前ろう付けをされている方も多いかと思います。
前ろう付けにより適合は改善されますが、操作方法を誤ると強度が下がることもあります。

ここでは、メタルセラミック修復物ブリッジの前ろう付け強度を確保し、精度を向上させるポイントを紹介します。

 


  1. 応力を開放する
  2. 前ろう付けなどの加熱操作をする場合、熱によってフレームが変形する可能性があるため、鋳造応力を開放すると効果的です。

    応力を開放するには、サンドブラスト処理で埋没材を除去した後、スプルーカット前にディギャッシング工程で加熱します。

    クラウン内面に埋没材を残しておくと、クラウンのたわみ防止になると言われています。

    鋳造物の応力開放

     

  3. 前ろう付け部位の面積と間隙
  4. 前ろう付け部の強度低下を防止するため、前ろう付け面積を広くとることが重要です。

    特に支台歯間の連結部で前ろう付けする場合は、連結部を広く確保します。

    また、ブリッジの場合は応力がポンティックの連結部に集中し、連結部で破折する可能性が高くなります。ポンティックの中央部で前ろう付けすると、前ろう付け面積が広くとれるため、強度が確保できます。

    ポンティックの中央部でカット

     

    ただし前ろう付けした箇所は気泡やクラックが発生しやすいため、トラブルが起きたときに修理がしやすい連結部で前ろう付けをする方も多く、一概にどちらが良いとは言えません。

    一般的にろう付け間隙は0.05~0.5mm(前ろう付けでは0.3~0.5mm) [1]が理想とされています。
    間隙が狭すぎると、前ろう材が流れにくくなります。

    広すぎると寸法精度が悪くなり、前ろう材の凝固収縮によりフレームがたわむことがありますので注意が必要です。

    また前ろう付け面は平行であるほど、前ろう材が流れやすくなります。

     

    適度な間隙(名刺の厚みは約0.25mm)

     

  5. 固定、埋没、乾燥時の注意点
  6. 作業模型上で連結するには、不要になったバーとフレームをパターンレジンやスティッキーワックスで固定します。

    埋没には、市販の(または自作した)ろう付け用スタンドを使用する方法と、ろう付け用埋没材でブロックを作る方法があります。

    ろう付け用スタンドを使うと少量の埋没材で固定できるため熱効率がよく、埋没材に起因するトラブル(ひび割れなど)が少なくなると言われています。

    自作スタンドの例

    市販スタンド(バーを固定した状態)

    スタンドの場合は熱伝導性がよい

    ろう付け用埋没材でブロックを作る場合は、ブロックのサイズをなるべく小さくします。
    大きすぎると熱効率が悪く熱の伝導が遅れ、前ろう付け時に母材や前ろう材が酸化し、前ろう材が流れなくなります。

    ただし厚みはブロックの強度を保つためにも15mm [1]は必要です。

    前ろう付け時の炎が回りやすいように、炎の通り道を付与します。

    前ろう付け用埋没材ブロック

     

    室温で埋没材を硬化させてから、ブロックをトリミングし、スティッキーワックスを熱湯で流し、残渣はスチームクリーナーで完全に除去します。

    熱湯やスチームクリーナーの熱がフレームに残っているうちに、前ろう付け部に前ろう付け用フラックスを塗布すると、前ろう付け間隙になじませることができます。

    次に水分を乾燥させます。電気炉150~200℃で約20~30分間乾燥させると、完全に水分を除去できます。ドライヤーを使用するとより早く乾燥できます。

    乾燥後、電気炉約500~700℃で約10~15分間予備加熱します。

  7. ろう付け作業の注意点
  8. 酸素を使用する前ろう付け用ブローパイプを使用して、ブロック(またはスタンド)とフレームを均一に加熱し、その後還元炎の位置で前ろう付け箇所を加熱します。

    全体に加熱した状態

     

    加熱時の酸化防止や酸化膜の除去、前ろう材の流れをよくするために少量のフラックスを間隙に追加塗布し、母材が赤く熱せられた時点で間隙に前ろう材を差し込んで素早く流します。

    前ろう材を流すには、ブロックとフレームを十分に加熱することが重要です。
    前ろう材が流れたら炎を弱め、ブロックとフレームにしばらく炎をあてて、全体が均等に冷却するようにします。

    これらの作業は素早く行い、炎をあてる時間は可能な限り短くします。

    ブロックは室温まで冷却した後に除去します。水道水に漬けると容易に除去できます。

    フレームに付着しているフラックスや酸化物は、希硫酸系の清掃液で超音波洗浄すると完全に除去できます。

    その後、蒸留水で超音波洗浄を行い、希硫酸を完全に除去して完成です。

    完成

     

    ※参考文献[1]五十嵐孝義 他編. 現代の歯科ろう付テクニック(別冊 QDT).クインテッセンス出版,1989

 

この記事は過去に発行したQ&Aを再編集したものです。