
歯科診療のデジタル化を診療回数から検証しました(2025年6月公開統計より)
2014年4月に保険導入されたCAD/CAM冠は、適応範囲が段階的に拡大され、CAD/CAMインレーも2022年4月に保険適用となりました。
そして2024年6月からはCAD/CAM冠用材料(Ⅲ)の適応範囲の拡大と、CAD/CAM冠用材料(Ⅲ)を大臼歯に使用する場合のエンドクラウンに加え、CAD/CAMインレー製作における光学印象も保険導入されました。
今回は、CAD/CAM冠やCAD/CAMインレー、そして光学印象の診療行為の回数をもとに、歯科医療のデジタル化について検証しました。
CAD/CAM冠とCAD/CAMインレーの市場について
今回は2025年6月に公開された厚生労働省の社会医療診療行為別統計(以下、統計)※から、ハイブリッドレジンブロックを用いたCAD/CAM冠やCAD/CAMインレーの治療がどの程度普及したのかを探ります。
※統計は、これまで毎年6月の審査分を対象として集計されていましたが、令和6年度の診療報酬改定より改定の施行月が従来の4月から6月になったことに伴い、集計対象月が6月審査分から8月審査分に変更されました。
保険導入と適応範囲の拡大
2014年4月に先進医療から保険導入されたCAD/CAM冠は、小臼歯から大臼歯、そして前歯へと適応範囲が拡大し、2022年4月にはCAD/CAMインレーが保険適用となりました。
その後2023年12月にはCAD/CAM冠用材料(Ⅴ)がすべての大臼歯で保険適用となり、2024年6月にはCAD/CAM冠用材料(Ⅲ)が金属アレルギー患者以外へも条件付きで第二大臼歯へ適応範囲が拡大し、さらにエンドクラウンが保険適用されました。
下表はCAD/CAM冠用材料の材料価格の推移です。
CAD/CAM冠用材料の材料価格の推移
CAD/CAM冠の普及状況
今回は診療行為の回数を抽出し、各部位ごとに歯科用金属と対比し検証します。
最新の統計(2024年8月分)では、金属とCAD/CAM冠の合計のうち、CAD/CAM冠が占める割合は小臼歯が44.7%(前年比−4.8%)、大臼歯が25.4%(前年比+12.6%)、前歯14.9%(+1.9%)でした。
特に大臼歯におけるCAD/CAM冠の普及が進んでおり、内訳はCAD/CAM冠用材料(Ⅲ)が19.7%(前年比+6.8%)、CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)が4.9%でした。大きな要因として第二大臼歯へ適応範囲が拡大したことと、新たにCAD/CAM冠用材料(Ⅴ)が保険導入されたことが挙げられます。
小臼歯
大臼歯
前歯
CAD/CAMインレーの普及状況
2022年4月にCAD/CAMインレーが保険導入されてから、2024年6月には大臼歯において適応範囲が拡大し、第二大臼歯でもCAD/CAMインレーの適応が可能となりました。さらには、CAD/CAMインレーを適応する際の窩洞形成に150点の点数が加点されるようになりました。
最新の統計(2024年8月)でみてみると、金属インレー(複雑なもの)とCAD/CAMインレーの合計のうち、CAD/CAMインレーの占める割合は、小臼歯では48.5%(前年比+10.6%)、大臼歯では27%(前年比+13.9%)を示しており、前回調査時と比較して、保険導入が進むことでCAD/CAMシステムを用いたインレー製作が増加傾向にあることがうかがえます。
CAD/CAMインレー
光学印象の普及状況
2024年6月より、デジタル印象採得装置(口腔内スキャナ)を用いてCAD/CAMインレーのための窩洞を直接印象採得・咬合採得した場合光学印象が保険適用となりました。最新の統計(2024年8月分)より、CAD/CAMインレーを製作するための各種材料の請求回数の合計のうち、光学印象を実施している割合は約22.9%でした。
光学印象を実施している割合(CAD/CAMインレー)
保険適用直後の調査結果でありながらも、CAD/CAMインレーの製作において高い割合で光学印象が実施されていることが表れています。
従来の印象法と比較し、光学印象を用いることで患者と医療現場の負担軽減も見込まれることから、今後光学印象の活用の幅が広がることが期待されます。