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歯科用貴金属価格 緊急改定の検討について(中医協)

2022年4月13日の中医協で、「歯科用貴金属価格の緊急改定について」が議題とされています。
公開された資料によると、歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)は3,149円/gから3,413円/gへと、プラス264円/gの改定案となっております。

本件は、報道では「改定案が了承された」とされていますが、実際に改定されるかどうか、また、改定された場合の材料価格は、厚生労働省通知等でご確認ください。

緊急改定の背景

2022年4月の診療報酬改定にて歯科用貴金属の告示価格が改定され、このうち金パラは、2,951円から3,149円となりました。

歯科用貴金属は素材価格の変動状況を踏まえ、3か月に1回随時改定がおこなわれます。
2022年4月からは変動幅に関わらず見直しがおこなわれるようになり、またその算出には、「前回改定以降、改定3か月前まで」の平均素材価格を使用していたものが、「前回改定以降、改定2か月前まで」に改められました。
これによって、より機動的に変動状況が反映されるようになりました。

つまり、2022年4月改定では2021年12月までの素材価格が反映されており、次回は2022年4月までの素材価格を反映し2022年7月に改定が実施される予定でした。
しかし、ウクライナ情勢で素材価格が急騰するという、想定されていなかった特殊事情を鑑み、2022年7月改定を待たず、特例的に2022年5月に緊急改定することが提案されました。

緊急改定(案)の概念(中医協総会(第519回)資料より)

 

貴金属相場の高騰

金パラの構成元素のうち金は金融資産のように利息はつきませんが、現物としての安定感から、個人だけでなく機関投資家や各国政府で保有され売買されています。
「有事の金」と呼ばれ、世界情勢に不安が高まると安全資産として需要が増加し、価格が上昇する傾向があります。

金地金価格推移:ヤマキン店頭小売価格

 

また、パラジウムは主要産出国であるロシアのウクライナ侵攻が激化し供給懸念が高まったことから、2022年3月9日にパラジウム地金の価格が12,515円/g(ヤマキン店頭小売価格 税抜参考価格)と史上最高値を記録しました。

パラジウム地金価格推移:ヤマキン店頭小売価格

 

これらの状況を踏まえ、つぎのように告示価格の改定案が示されました。

緊急改定を行う場合の歯科用貴金属の告示価格(案) (中医協総会(第519回)資料より)

 

日本歯科新聞(2022年4月5日)1面記事にあるとおり、ロシアによるウクライナ侵攻の影響等により、告示価格が実勢価格を下回る状況が懸念され、多くの歯科関係団体が緊急対応を求める中で示された緊急改定案の行く末に注目したいと思います。