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貴金属元素・貴金属合金 ALLOY
貴金属元素の役割 鋳造欠陥 腐食と変色

Q1. 腐食とは?

 金属がイオンとなり溶出したり、イオンとなったものがさらに他のものと化合物を作ったり、消耗劣化します。金属が不安定となり、常に反応が生成し進むことになると合金表面は、荒れたり化合物の生成で着色したり、またイオンの溶出から発生する金属アレルギーの原因ともなります。生成される化合物は、酸化物、硫化物、塩化物等が多く金属の種類にも異なり、これら有色の化合物であれば審美的にかなり低下します。
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Q2. 変色とは?

 合金表面にプラーク等が付着し色調が変化したり、他のものと化合物を作り着色され、その後の着色層は変化することなく安定すると、何ら性質の劣化は及ぼしません。このような単なる色調だけの変化だけであり、化学的耐久性は問題でないことが腐食との違いです。
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Q3. 金属のイオン化特性とは?

 金属は溶液中に浸漬すると、金属表面では、金属イオンとなって溶液中に溶出しようとする傾向を示します。これを“イオン化傾向”と呼び、歯科の合金も口腔内の唾液と接触した場合、合金組成の金属がイオンとなり唾液に移行しようとする傾向は同様です。
 これらの性質から、溶液中に溶出した金属イオンの正の電位と金属表面の負の電位との界面に電位差を生じます。
 この電位差は、金属の種類によっても異なり、電位の値を定量的に表したものに、水素を基準電極として大きさを並べた標準電極電位(又は電気化学列という)があります。(基準電極に標準水素電極を用い、金属イオン濃度が1mol/lの溶液にその金属を浸漬した時、発生する電位)
各金属のイオン化順列
表1 各金属のイオン化順列

  表1はイオン化傾向を示したもので、これをイオン化順列といいます。
また、表2は各金属の標準電極電位を示したもので、イオン化傾向の大きい金属ほど溶液中では標準電極電位が小さく、陽極的であり酸化や腐食され易く、他の非金属のどの元素とも反応性が強くなります。また、イオン化傾向の小さい金属ほど電位が大きく腐食されにくい傾向となります。
  イオン化傾向の大きい金属を卑金属、小さい金属を貴金属といいます。従って、金、白金、パラジウム等の貴金属は、特別な環境でない限り、イオン化や化合物の生成変化が少なく、腐食されにくいのです。
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表2 各金属の標準電極電位
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Q4. 腐食の分類は?

 口腔内における歯科用合金の腐食は、かなり複雑であり合金の種類によっても比較的違いはありますが、腐食されにくい貴金属組成の多い合金においても合金の不均一性(組織、表面状態の影響等)及び口腔内の環境などにより大きく左右されます。
 腐食は、金属元素と口腔内で存在する非金属とが化学的に反応して行われる化学腐食と、金属表面の電極電池の形成の電気化学的反応による電解腐食とに大きくわけることができます。さらにそれぞれの腐食を詳細に分類すると次のようになります。

 腐食には、多くの種類があり、口腔内では単独の腐食が生じることは少ないのですが、たいていは口腔内の環境などの影響を受け、一緒になって腐食が進行していきます。
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Q5. 化学腐食とは?

Q5-1.水素置換型腐食とは?
 口腔内の唾液では、多少の水素ガスが存在しており、この水素よりもイオン化傾向の大きい金属は、この水素イオン(H+)と置換してイオンになろうとする性質から溶液中に溶解し、腐食進行していきます。
 さらに水素原子が水素ガス分子になるための触媒になるような金属不純物が存在すると腐食は早く進行します。
 また、溶液中に酸素や酸化剤が存在すると生成した水素(H)と反応して水(H20)ができ、腐食は促進されます。
 H2ガス気泡が除去され易い凹凸状の著しい表面、水素イオン濃度や温度が高いほど腐食は促進されます。
 しかし、口腔内においては、水素よりイオン化傾向の大きい金属を単独で使用することはほとんどなく、これらの金属は、貴金属合金として金属組織を均一にさせて用いられるため、この種の腐食はかなり防止されます。

Q5-2.酸化型腐食とは?
 水素よりもイオン化傾向の小さい金属は、一度酸化されて酸化物となり、この酸化物が溶液中に溶解して金属イオンとなり腐食が進行します。
 溶解してできた金属イオンは、口腔内においては可溶性の塩化物や硫化物等が存在した場合、それらと金属化合物を作り易くなります。
 特に銀、銅等は硫化物を形成すると濃い色調(黒色)の化合物となります。銀以外の貴金属では、その金属イオンは口腔内の蛋白質と結合して不溶性化合物を作ったり、表面に沈着することがあります。
 しかし、イオン化傾向が小さくなればなるほど「酸化物→溶液中に溶解→金属イオン」の反応は進行しづらくなるため、腐食はしにくいと言えます。
 また、白金属元素は、腐食が進行しにくく、表面に生成した酸化物の膜が緻密(保護被膜)に一様に形成するため、金属を保護し易く耐食性が良好になります。
 金や白金、パラジウム及びこれらの合金が腐食しにくいのも、これらの理由と考えられます。

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Q6. 電解腐食とは?

Q6-1.局部電流型腐食とは?
 図-1は異なる金属の接合による局部電池の模式図です。
 種類の異なる(イオン化傾向)金属を接合(接触)
したものを溶液中に浸漬させると、両者の金属は電極電位が異なるため、イオン化傾向の大きい金属(卑な金属)と小さい金属(貴な金属)との間に電位差を生じ電池(局部電池又はガルバニ電池)を形成します。
 その結果、ここに電流が流れ(局部電流)腐食を生じます。
 このように異なる金属を電極とした局部電池の形成によって電気化学的反応で生じる腐食を局部電流型腐食と呼んでいます。

異なる金属の接合による局部電池の模式図
  図-1 異なる金属の接合による局部電池の模式図
 図-1に示すように電流は、接合部では、貴な金属から卑な金属へ流れ、一方溶液中では卑な金属から貴な金属へ逆に流れます。その結果、卑な金属は金属イオンとなり溶液中に溶解して腐食は促進されてしまいます。
 また、金属イオンとなり溶液中へ溶け出すと同時に、電子を放出し貴な金属の方へ移動します。
 外部回路へ電子を供給する電極を陽極(アノード)、外部回路から電子を受け取る電極は陰極(カソード)と呼ばれています。
 これら両者の関係は、陽極(アノード)は、電位の低い金属(イオン化傾向の高い金属)で陰極(カソード)は、電位の高い金属(イオン化傾向の低い金属)との関係となり電位差が大きいほどまた、電流は増大されるほど腐食は促進されることになります。
 これらのことから、異なった電位のもった金属を溶液中で接合、または接触することで電池を形成し腐食を生じることが充分理解できます。歯科用では、種々の合金が多く用いられ合金においても口腔内の唾液という電解質溶液を通じて基本的これらの腐食過程をあてはめて考えることができます。
 
Q6-2.異種金属の接合による腐食とは?
 歯科におけるろう付も異種金属の接合となり、特にろう材自体は母体自体より一般的に品位も低く、複雑な組成となっているため、先記に説明した局部電流型腐食をろう付部で受け易くなります。
 図-2に示すようにろう付部と母体合金の間に電池を形成し、ろう付部は陽極(アノード)母体合金は陰極(カソード)となり、ろう付部の合金組成の一部が金属イオンとなり唾液に溶出し腐食され易くなります。
 ろう材と母体合金との電位差が大きいほど腐食は、加速されるため、電位差を少なくするためにも母体合金の組成に類似したろう材を選ぶことが重要です。
ろう付部による腐食の模式図
  図-2 ろう付部による腐食の模式図
 
Q6-3.異種金属の接解による腐食とは?
 口腔内において修復された対合歯や隣接歯に種類の異なる合金が接解した場合においても、同様に電位差を生じ腐食され易くなります。
 図-3に示すように異なる合金が、断続的に口腔内で接解した場合、M1とM2の組成の異なる合金の間で電位差を生じ、M1は陰極、M2は陽極となってM2の合金の表面から金属イオンが溶出し腐食され易くなります。
 臨床においては、しばしば経験する実例であるが、金合金、金銀パラジウム合金、銀合金、ニッケル合金など、数多くの組成の異なる合金があり、組合せにおいては充分注意する必要があります。
異なる合金の接解による腐食模式図
  図-3 異なる合金の接解による腐食模式図
 
Q6-3.金属組織の違いによる腐食とは?
 歯科用合金のほとんどは、ミクロ的に見ると図-4-(1,2)に示すように均一ではなく部分的に組成の違いがあるのが通常です。
 鋳造後、均一な固溶体を形成されると問題はありませんが、凝固した組成の中に著しく濃度の異なった相が形成されると、それぞれ相がミクロ的に接合した状態となり、相間で電池を形成し腐食され易くなります。
 卑金属を主体とした相(固溶体)が陽極となり、貴金属を全体とした相が陰極の状態となって卑金属を主体とした相金属イオンが唾液へ溶出されます。
 特に鋳造体等の著しい組成の違いが発生した場合、各相間で電位差を生じ、このような腐食がみられ易くなります。
 鋳造後、熱処理により組織を均一化処理することでこれらによる腐食を防ぐ方法もあります。
金パラ合金(Au12%,Pd20%)の鋳造組織(×100)
 図-4-1 金パラ合金(Au12%,Pd20%)の
 鋳造組織(×100)
合金の各相間による腐食模式図
 図-4-2 合金の各相間による腐食模式図
 

Q6-5.不純物、偏析による腐食とは?
 歯科用合金において、均一な組織であっても偏析を生じると組成は著しく変化します。このように組成が著しく変化した場合、偏析した部分に電位差が生じ、陽極となる箇所が腐食され易くなります。  また、不純物があった場合陽極となり同様な現象が生じますが、特に不純物は結晶粒界などに析出し易いため粒界を中心に腐食され易く、粒界腐食とも呼ばれます。特に粒界を中心に腐食が促進されると粒界の亀裂の原因となります。

Q6-6.加工ひずみによる腐食とは?
 合金等を加工すると、局部的に応力が加わり内部応力が発生し、この応力を受け加工ひずみを生じた部分が陽極となりひずみのない部分より腐食され易くなります。 また、加工等により合金の結晶粒界に応力を受けたりすると、結晶粒内より粒界にそって腐食が進行することにもなります。
 歯科の補綴物では、ほとんどがわずかながら研磨などによる加工を受けていることになります。特に辺縁などのバニッシュによる強加工やクラスプの曲げ加工は、応力の腐食を受け易くなるため、過大な応力の付加は出来るだけ避けるべきでしょう。

Q6-7.濃淡電池腐食とは?
 電位差で生じる腐食は、異種の金属の間で形成される電池が原因でしたが同じ金属でも濃度の異なる溶液中に浸漬された場合、溶液の濃度差で電池を形成するという現象で、これを濃淡電池と呼んでいます。濃度の低い溶液に浸漬した金属は陽極、高い溶液の方は陰極となって腐食が生じ易くなってきます。 口腔内の環境の変化においても異なった唾液が食物のかすなどにより供給され易いため、局部的に濃淡電池を形成し易くなります。
 口腔内の補綴物が唾液中で各部に酸素の量に差があった場合も、同じような電池を形成する現象となり、酸素濃度の要因から発生するため特に酸素濃淡電池とも呼んでいます。 酸素の濃度差の影響を受けて、酸素濃度の低い部分が陽極となり腐食され易く、口腔内でもこのような条件が起こりがちです。
 合金表面に直接プラークが付着したり、合金表面に凹部(微細な割れ、傷、鋳巣)があったり、ポンティック
の基底面、隣接面の接触辺縁での隙間等の口腔内の環境下では、著しく酸素供給量が低下します。特にこれらのくぼみはプラークで覆われるため濃淡電池が加速され、さらに深く腐食が促進されます。 腐食が点部分の小さな穴状に進行していく現象を特に孔食とも呼んでいます。
 表面状態の影響を避けるためにも、合金表面はなるべく凹凸状を少なくし、表面傷をなくすためにも平滑に研磨を仕上げるべきでしょう。

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Q7. 不動態とは?

金属の不動態化傾向

表3 金属の不動態化傾向

金属が化学反応により表面に緻密な酸化物の膜を形成した場合、この膜が金属表面を保護し腐食は生じ
なくなります。このような現象を不動態といい、特にこの緻密な膜を保護被膜と呼んでいます。まさに卑な
金属であってもこのように不動態化することで耐食性が向上する性質となります。金属の種類によって不動
態の度合いが異なり、その傾向を表3に示します。
不動態化した表面の酸素被膜が、溶液中で可溶にない限り腐食は生じませんが、口腔内では機械的影
響で酸化膜の一部が破壊されると腐食が進行し、破壊された部分に再度、酸化被膜が形成されると腐食
は生じなくなります。 不動態の代表的な金属にクロムがあり、表面に緻密な酸化膜を作り、その後反応は
進行しません。
歯科で使用される中でもチタンも不動態化を示す金属の1つであり、その他クロムとの合金として18-8
ステンレス鋼、ニッケルクロム合金、コバルトクロム合金などがあります。


【参考文献】
1)東節男ほか:最新歯科材料学、学建書院、38〜41、1980
2)歯科理工学会:歯科理工学、医歯薬出版、63〜71、1947

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