(1) 本書を刊行させていただいた背景について
みなさまご承知のとおり、昨年4月にはCAD/CAM冠が先進医療から保険導入され、新しい技術の到来に期待がかかっています。
かねてより問題視されておりますが、近年、歯科技工士専門学校への入学者が極端に減少、歯科補綴物を製作する歯科技工士の減少と高齢化が現実化しています。人手不足による歯科医療の品質低下は患者のQOLを維持するために喫緊で解決しなければならない課題であり、コンピュータによる歯科補綴物の設計、作製する歯科用CAD/CAMシステムの普及が解決策のひとつと見られます。
歯科用CAD/CAMシステムでは、歯科技工士が手作業(アナログ)で行っていた一部作業をコンピュータ(デジタル)で設計・加工を行うことにより、歯科技工士のいくつかの作製プロセスを省くことができ、人手不足の問題を解決すると考えられています。さらに精度に影響する手作業を極力排除することで、精巧なものを安定的に作製することが期待され、歯科技工士の働き方は、以前とは異なるステージに進化する可能性があります。
これはまさに歯科業界における技術の不連続(アナログからデジタルへの変革期)であり、現在の歯科業界はひとつの「産業革命」の真只中にあると言えます。
そのような環境にある歯科業界では、ハンドブック第9章で触れておりますとおり、歯科技工士のみなさまから歯科用CAD/CAMに関する情報や技術指導・支援について求める声が非常に多いのが現状です。そこで、弊社では、いち早く「CAD/CAMとは何か」「CAD/CAMでできることは何か」など、わかりやすい情報をまとめ、提供させていただくことといたしました。
(2) 本書の目的
技術の不連続あるいは産業革命の中にある歯科業界において、歯科医師や歯科技工士のみなさまに自社の研究や共同研究で培った技術や情報をお伝えすることで、今後、小規模歯科技工所でも新しいデジタル技術をスムーズに導入していただき、地域歯科医療の発展と日本の技術伝承に貢献することを目的としております。
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