1 はじめに
＜歯科用CAD/CAM ハンドブックの意義＞
　2014 年４月，「CAD/CAM 冠」が小臼歯を対象に保険導入されたことは，アナログからデジタルへの新しい技術に向かう歴史的転機といえる．さらに，2017 年12 月１日からCAD/CAM 冠が下顎第一大臼歯にも保険適用となり，今後，さらなる用途拡大が期待されている．そんな中，海外や他業界からの歯科業界への参入が相次ぎ，材料メーカー各社から続々とハイブリッドレジンブロックが市場投入されている．歯科医師や歯科技工士のみならず，大学などの研究者やディーラーに至るまで，急速なデジタル技術の普及に際し，限られた情報の中で最新の情報提供を期待していると推察する．
　そこで，YAMAKIN 株式会社（以下，ヤマキン）は市場の機器と材料を自由に選択できる「オープンな環境」下で，それらの組み合わせを試行錯誤しながら実行することが，イノベーションにつながると考え，「オープンな環境」を共に目指すCAD/CAM システムメーカーと協力し，デジタル技術を正しく普及させるために最新の情報を広くお伝えすべく2015 年２月に「歯科用CAD/CAM ハンドブック」の第一弾を発刊した．
　ハンドブック発刊のコンセプトとして，２つのテーマをもって制作に取り組んだ．１つ目はいま起きている「歯科業界における産業革命」に言及することであり，２つ目は技術転換により，地域の歯科医療が危ぶまれ，技術が伝承されなくなることへの危機感を共有し，「地域医療と技術伝承を守るために」何をすべきか読者とともに考察することであった．これまで６弾を発刊し，シリーズ累計発行部数は50,000 部を超えている．多くの歯科医療関係者に活用いただく中で，特に歯科医師会や歯科技工士会が支部単位でテキストにされ，スタディグループの教育研鑽資料にご活用していただいていることは，誠に光栄の至りと感じる．

1． はじめに
インタビュー�@　 歯科技工業界の明日のための教育改革とデジタル化（末瀬 一彦）
インタビュー�A　 歯科技工業界のイノベーションとこれからの変革（中西 茂昭）
 
2． 歯科技工士の新しい働き方（ 河田 岩雄）
２-１　歯科技工士の減
２-２　手作業からデジタル技工への変化
２-３　女性歯科技工士の活躍
２-４　歯科技工士の新しい働き方
２-５　法制度と情報管理のハードル
 
3． 歯科技工士の価値を向上させる取り組み（佐藤 雄司）
３-１　「労働政策研究・研修機構」の研究調査から導かれる歯科技工士の客観的価値
３-２　日本歯科技工士会「日技新発展『７』プラン」の取り組み
インタビュー�B　 大臼歯CAD/CAM冠の現場最前線（三谷 浩一）
   特集記事�@   　 CAD/CAM冠保険適用の解説
〜小臼歯，大臼歯適用の違いをわかりやすく〜（加藤 喬大）
 
4． 大臼歯適用ハイブリッドレジンブロックの最新情報（松浦 理太郎，溝渕 真吾）
４-１　歯ブラシ摩耗試験
４-２　Ｘ線造影性
４-３　破壊試験
４-４　虫歯菌付着抑制試験
４-５　生物学的安全性評価
４-６　接着のポイント
４-７　ユーザーガイド（装着手順）
４-８　CAD/CAM 冠普及状況
   特集記事�A   　 ハイブリッドレジンブロックの新たな臨床例
(前歯やアンレー症例への試み）（加藤 喬大）
 
5． モノリシックジルコニア冠の破壊試験評価（山添 正稔，前田 直紀）
５-１　破壊試験による評価
５-２　ジルコニアの破壊耐性
 
6． スーパーエンジニアリングプラスチックの材料特性（鶴留 航）
６-１　定義と種
６-２　性能の特徴
６-２　加工方法と歯科への応用
 
7． 最先端の加工方法
〜 3Dプリンターとハイブリッド加工〜（近藤 昌樹，佐藤 雄司，山本 恭平）
７-１　３D プリンターの概要
７-２　デジ研における３D プリンターの活用について
７-３　積層造形と切削，旋削加工を融合したハイブリッド加工機と積層専用機
 
8． 歯科業界のデジタル化 （河田 岩雄，山下 大輔）
８-１　受発注システムの全
８-２　デジタルサイネージの原理と応用例
８-３　AI の原理と応用例
８-４　変わる情報発信の手段（ヤマキンWeb マガジンサイトの紹介）
   特集記事�B   　 CAD/CAM支援の活用による競争優位性（宮井 克樹，阿部 誠二）
 
9． おわりに
 
付録
付録 ヤマキンCAD/CAM 材料ラインアップ